無の探求

通称「なす」 無色で無職な無敵なフリーライター。まだ誰にも染められてません。今ならあなた色に染めるチャンス。2017年7月18日ブログ開設。

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北朝鮮で話題になったミサイル(ICBM)と迎撃について徹底解説

ICBMという言葉は軍事系のニュースでたまに聞くので言葉自体は知っている人が多いと思いますが、具体的にはほとんど知らない人がほとんどなのではないしょうか。まあ知ったところで私たちに出来ることは何もなかったりしますが、なんちゃって警報のJアラートに期待するよりは有意義だと思うのでまとめてみました。

 

 

ミサイルの種類

主に航続距離(射程範囲の長さ)の違いで4種類に分類される。中間に当たるMRBMとIRBMに関しては特筆すべき事項が少ないため、今回は簡易な説明のみ。また、分類距離は資料によって微妙に異なる。

そもそも弾道ミサイルとは

ロケット推進により大気圏内外まで上昇し、その後は重力で弾道のみが高速落下するタイプのミサイルを指す。複数個のロケット部分で構成されており、段階的に切り離すことで推進力を保つのが特徴。到達高度は航続距離やその他諸々に応じて変わる。

SRBM

日本名:短距離弾道ミサイル
英語名:【short-range ballistic missile】
射程:1000km以下

4つの分類の中では最も射程距離が短いものの、発射にかかるコスト(主に設備)が安いので多くの国に採用されている。最大射程における着弾までは時間は低軌道の場合で5,6分、高軌道の場合でも10分程度となる

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ちなみに北朝鮮から東京までの距離は1191kmなので、最も安価なSRBMでさえ充分に射程圏内だったりする。つまり、日本を狙うだけならより高度な技術力を必要とするICBMなんて必要ないわけだ。先日のJアラートの時に話題になった「着弾まで6分しかなかったので警報の意味がない」というのは低軌道で飛ばしてきたからである。

MRBM

日本名:準中距離弾道ミサイル
英語名:【medium-range ballistic missile】
射程:1000~3000km程度

後述のIRBM(中距離弾道ミサイル)との差異は射程がやや短いというだけで、厳密は区分はなかったりする。ちなみに1998年に発射された「テポドン1号」はこの分類にあたる。

IRBM

日本名:中距離弾道ミサイル
英語名:【intermediate-range ballistic missile】
射程:3000~5000km程度

MRBMとの差異はほとんどなく、微妙な位置づけなので特に述べることなし。

ICBM

日本名:長距離弾道ミサイル
英語名:【intercontinental ballistic missile】
射程:5500km以上

最も射程の長いミサイル。最大到達高度は1000~1500kmにも及ぶため、命中精度に問題を抱えることが多かった(といっても半径3km程度の誤差)。そのため、多くの場合はその誤差を補うために破壊力の高い核弾頭を用いている。

しかし現在はアメリカを始めとした技術力の進歩により半径0.1km程度まで誤差が縮小され、文字通りのピンポイント爆撃が可能となっている。北朝鮮がそのレベルに達しているかは不明だが、ICBM開発初期の3km誤差でも核弾頭ならば致命的となる。

ちなみに2006年に発射された「テポドン2号」と、2009年と2012年に発射された「改良型テポドン2号」はこの分類にあたる。また、テポドン2号は発射47秒後に爆散して海上に落下した。

その他の分類

SLBM

射程に関係なく潜水艦から発射されるものを指す

ALBM

射程に関係なく航空機から発射されるものを指す

高高度核爆発における核弾頭の影響について

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 弾道ミサイルの弾頭は容量や質量が限られるため、少々でも多大な効果が望める核兵器や化学兵器が搭載されることを前提としている。この項では核弾頭を搭載した弾道ミサイルの影響と迎撃について解説する。

電磁パルス

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 高度100~数100kmの高層大気圏で核を爆発させることで大量の電離放射線を放出し、水平距離で最大1000kmにも及ぶ範囲に電子機器を不能にすることが可能となる。地表に着弾させないため、求められる技術水準は比較的低めであることが特徴。つまり、高高度への打ち上げにさえ成功すれば可能な戦術である。だが、発射されてすぐの段階ではそれが衛星ロケットなのかミサイルなのかすらわからないので、いきなり打ち落とす行動に出ることも難しい

「さっきのはミサイルじゃなくて衛星ロケットだよ^^」と宣言されると、残骸を回収したり環境変化を確認したりできない限り証拠がないので何も言えなくなるわけだ。

ちなみに、一般家庭にある電子機器はほぼ間違いなく全てダメになるが、軍事関係の電子機器などはEMP対策を施されている場合が多いのでダウンする心配はないと思っていい。また、この電磁パルス(EMP)には致死性がないが、爆発を直視すると網膜が焼ける程度の威力はある。

電磁パルスで起こりうる事態

あらゆる電子機器が長期的に不能になるため、電気水道ガスなど各種ライフラインが壊滅的な被害を受ける。つまり、EMP攻撃を受ければ文明レベルが明治時代くらいまで落ちることとなる。

連絡手段も交通手段も全てが麻痺するため、多くの餓死者が出ることも予想される。また、それに伴う混乱や不安の増長も容易に想定され、海外で賞賛されることの多い「災害時の規律正しい行動」も不可能となるかもしれない。

2004年のアメリカの議会報告書「電磁パルス攻撃の合衆国への脅威評価」ではEMP攻撃があった際の復旧には数年を要し、その間に人口の9割が死亡すると予測されている。当時の米国の人口は3億人あまりなので、2億7千万人も殺傷できるということになる。

ICBMの迎撃

重要なのは、対象が普通のミサイルではなく弾道ミサイルだという点。アホなコメンテーターが「迎撃したら破片が危ないからダメ!」とか喚いているが、それは論外なので無視して構わない。

日本におけるミサイル迎撃の流れ

ミサイル迎撃には主に3つのパターンがあるので、まずはそれらを解説。

  1. イージス艦から発射して大気圏外まで到達し、ミサイルを迎撃する「SM-3」
  2. 陸上基地から発射し、大気圏外を飛行するミサイルを迎撃する「GBI」
  3. 高度が下がり始める高高度からの再突入時を狙う「THAAD、PAC3」

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それぞれの対応する範囲を図で示すとこんな感じになり、よく話題に挙がるPAC3は実は最終フェーズで用いられる迎撃システムであることがわかる。コレの出番ということは、上記2つの迎撃手段に失敗した「非常にマズイ状況」であるか、あるいは迎撃しなければならないほどの破片が飛来してきたことを意味する。

ちなみにPAC3の導入は費用対効果の面から自衛隊には当初反対されていたが、「アメリカは10兆円もかけて導入してるんだからウチも導入するべき」として強引に導入に至った経緯がある。しかしその実態は連続発射されたミサイルには対処し切れない上に防衛範囲も非常に狭い限定的なものだった。

ICBM迎撃は非常に困難

昔は95%迎撃可能だとかワイドショーでよく言われていたが、現実はそう甘くない。そもそも100%ではない防衛システムに価値はないとか言われたりしている。防衛が難しい理由は以下のとおりである。

速度が速すぎる

まずは一般に高速のイメージがあるものを速い準で並べてみる。

ライフル弾:1000~1500m/秒
F-15(戦闘機):810m/秒
ジャンボジェット:277m/秒
チーター:30.5m/秒
ウサイン・ボルト:12m/秒

見てのとおりライフル弾の初速で秒速1000m程度で、時速だと3600km程度となる。それに対し、ICBMの速度は約8000m/秒。時速だと28000km。

ライフル弾の初速の約8倍もあり、弾頭の質量も数100㎏を超えるものがある。そんなものが時速28000kmで大気圏外から落下してくるわけだ。これは宇宙空間を漂っている国際宇宙ステーションの飛行速度とほぼ同じで、1時間半で地球を1周できるくらいの速度。よくミサイル防衛は「銃弾を銃弾で撃ち落とすより難しい」なんて言われているのはこのためである。

発射前に潰せばいいのでは?

そんな風に思う人もきっと多いことだろう。しかし、コレも現実は甘くはない。

まずミサイル発射は「発射の際の大量の赤外線」を探知することで行っているわけだが、現在のミサイル探知の方法はこれしかない。つまり、先手を打つことができない。

ICBMはその戦術効果の高さから、情報の漏洩には細心の注意を払っている。発射されるのは主に潜水艦や山の中であり、発射前に視認して警戒するのもほぼ困難。

これは「移動式ICBM」という形式であり、車両型のものはこのような形状をしている。

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最近では発射台の周囲をトンネル状に覆って、発射の際の膨大な熱量を感知されにくくする手法もメジャーとなっている。こうすることで通常よりも感知まで数分遅らせることができるが、この数分はミサイル防衛をより困難なものにする。

迎撃システムがICBMに対応しきれていない

イージス艦のミサイル防衛実験は42回中35回成功、GMDは18回中10回、THAADは18回全て成功。GMDは「ICBM撃墜に特化した防衛システム」として開発されたものだが、その結果は散々なものである。

また、先の項で紹介した一連のシステムは「中距離以下の弾道ミサイル」の迎撃を目的として開発されたものであり、高高度を飛行する長距離弾道ミサイルには対処しきれない。迎撃実験も本物のICBMではない上に、いつ来るかわからない実戦とは程遠い部分があるのも否めない。GMDも最近になってようやく実験に成功した程度の精度だ。

www.bbc.com

また、イージス艦からの迎撃に失敗した場合のPAC3での対処は更に穴だらけだ。配備数も少なく、その有効防衛範囲は50km程度しかない。

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都市圏はだいたいカバーされているが、都合よくそこに落ちてくるとも限らない。そして、この情報は当然向こうにも筒抜けのはずである。余程のアホでない限りは必ず対策をしてくるはずだ。

まとめ

調べれば調べるほど不安な状況であることがわかるかと思います。個人で核シェルターを持つ家庭などまずありませんし、もし発射されたら私たちに出来ることは「地下に逃げる」「ガラスのない頑丈な建物に行く」といったことくらいしかありません。しかも5分以内にです。

EMP攻撃の可能性も高まった今、今後の情報には常に目を見張っていた方がよいでしょう。